中小企業等に対する金融円滑化対策の一年延長について

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釧路新聞リレーエッセイ「経営のつぼ」より


釧路公立大学非常勤講師

税理士・行政書士 甲賀伸彦


<中小企業等に対する金融円滑化対策の一年延長について>


 さて、平成21年12月4日より施行されている『中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律(中小企業金融円滑化法)』は、当初平成23年の3月31日までの時限立法でしたが、「金融機関の業務の健全かつ適切な運営の確保に配慮しつつ、中小企業者の事業活動の円滑な遂行及びこれを通じた雇用の安定並びに住宅資金借入者の生活の安定を引き続き期するため」に、1年間の期限延長する必要性が検討され、平成24年3月31日までとするよう、本年1月25日に閣議決定のうえ国会に提出されたところです。


 円滑化法に基づく貸付け条件変更等の状況によれば、平成22年9月末現在、申込み1,114,889件、実行979,693件、実行率は87.9%となっており、一層の増加傾向にある状況です。


 平成22年12月14日に金融庁から公表された『中小企業円滑化法の期限の延長等について』を検討することで、中小企業者等に対しての金融機関等の対応を読み取れることができます。


 これによると、金融庁のこれまでの取組みは、いわゆる「リーマン・ショック」以降の金融の円滑化を図るため、中小企業金融円滑化法をはじめとする種々の施策を実施してきたところであり、今後は以下のような対応をするとしています。


 基本的な考え方として、中小企業等の業況や資金繰りは、改善しつつあるものの、依然厳しい。こうした中、先行き不透明感から、今後、一定の貸付条件の変更等への需要があると考えられる。一方で、貸付条件の変更等に際しては、金融規律も考慮し、実効性ある経営再建計画を策定・実行することが重要であるとしています。


 このため、中小企業金融円滑化法を機に、金融機関が、貸付条件の変更等を行っている間に、コンサルティング機能を十分に発揮することで、中小企業者の経営改善が着実に図られ、中小企業者の返済能力の改善等につながるという流れを定着させる必要があるとしています。


 よって、円滑化法を1年間延長とするとともに、その運用に当たっては金融機関による開示・報告資料の大幅な簡素化や、金融機関による経営再建計策の策定支援等のコンサルティング機能の発揮の促進などに改善を加え、法の期限後も、金融機関による金融仲介機能が適切に発揮される環境整備を目指すとともに、引き続き中小企業の資金繰りに万全を期すとしています。


 この中で注目すべきは、金融機関が中小企業に資金供給をするだけでなく、「金融機関によるコンサルティング機能の発揮の促進」を強調している点です。コンサルティング機能とは、①貸付条件の変更等が行われた後の継続的なモニタリング、②経営相談・指導等や事業再生等を指しますが、監督指針の改定で、金融機関が果たすべき役割を具体化していく模様です。


 実際のところ、多くの金融機関では、経営改善計画策定が困難な中小企業が多いことや、経営改善計画の策定支援に対応できる社員に限りがあることなどから、その対応に苦慮しているのが現状であるようです。このような状況から、経営計画の策定では外部のコンサルティングも容認するようで、1万人超の税理士・公認会計士のネットワーク「TKC全国会」が金融機関向けに経営改善計画の策定支援のサービスを始めています。

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