釧路新聞掲載 <経営のつぼ>より

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平成22年8月6日掲載分


釧路公立大学非常勤講師

甲賀伸彦(税理士・行政書士・AFP)


金融機関との付き合い方(与信)


 普段、金融機関とどのように接していけばよいのでしょうか。それを考える前に、金融機関のビジネスモデルは、預金などで集めたお金を運用して成り立っている事を理解する必要があります。

 ではその運用とは何か?企業への融資や個人の住宅ローン、あるいは債権などに投資することで、利息などの収入を得ることです。ちなみに、最近は手数料収入の割合もアップしています。要するに、金融機関は、一定のリスクを取りつつ、収益を上げているのです。

 では、そのリスクとは何か?企業融資に関しては「信頼度」ということになります。そう、信頼関係が第一なのです。与信(よしん)って言葉を聴いたことはないですか?信用を与えるって事です。具体的には融資や融資枠を供与することをいいます。

 要するに、企業としては与信を得るためにできることをしなければなりません。
一つは、決算書の信頼性を高めることです。特に貸借対照表の各勘定科目については実在性という観点から、それぞれの内訳明細を作成し、それを担保する資料の保存が要求されます。さらにはこれら会計資料、並びに会計帳簿の適時・適正な情報開示とこれを社長様が自ら報告できる体制が必要となります。私たち税理士ができることは、「税理士法33条の2の書面添付」や「中小企業の会計に関する指針の適用に関するチェックリスト」によってそれらを担保することです。

 金融機関の方からよくお聞きする話ですが、試算表提示やその内容を聞こうとすると、「私はよくわからないので会計事務所へ聞いてくれ」との返答される場合は、その企業に対する与信も、決して高くはならないということです。本来、企業は、その会計情報をもとに各種の経営意思決定を行うべきなのに、最新の企業情報も社内に無い、また、その内容把握もできていないとすれば、外部の金融機関からの評価も下がって当然ですね。

 二つ目は、企業の実態を理解してもらうことです。月次の試算表は翌月内に自社で作成していることが大前提となります。さらには、予算を策定していること。可能であれば5年間の中期経営計画を策定し、そのうちの1年を単年度計画として落とし込み、実績を対比していることが必要です。また、企業の強みや弱みを理解し、それを言葉で表現できることも大切です。

 金融機関へは最低でも年に2度ほどは訪問したほうが良いですね。できれば毎月試算表をお届けすることが信頼度アップにつながります。特に決算報告の時には、融資担当者方へお願いして、融資課長さんや支店長さんと面談することも重要かもしれません。

 最近では、金融機関は融資先に対するモニタリング機能の強化とコンサルティングの拡充を行っております。これからは、今まで以上に一歩踏み込んだ形で金融機関との付き合いを強化していくことを考えてみてはいかがでしょうか?

おしまい 甲賀

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残暑お見舞い申し上げます

先生のブログをたのしく拝読させてもらっています。

今回の「<経営のツボ>与信」を若手経営者勉強会の資料にコピーさせてください。
決算書の信頼性と経営計画が企業経営者には重要です。個人にも当てはまることですね。
信頼される人になるための努力は無限です。人生設計もまた・・。ご健勝祈ります。

Masajiさん ども

どうぞ、ご利用くださいませ(^。^)

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