金融円滑化法

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平成22年2月19日 釧路新聞エッセイ「経営のつぼ」より(新聞掲載版は、一部省略されております)

<中小企業等に対する金融円滑化対策の総合パッケージ>

最近の経済金融情勢及び雇用環境の悪化を受けて、中小零細企業者や住宅借入金などのいわゆる「債務者」の負担が重く圧し掛かっているところであります。東京三菱UFJ銀行の例で紹介しますと、リーマン・ショック以降、返済条件の変更を申請してくる企業は、全支店約200店舗で月間1,000件にも及んでいるそうで、その案件を約60人の行員で処理しているとの事です。メガバンクといえども大変な状況と感じられます。

さて、昨年12月4日より施行されている『中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律(中小企業金融円滑化法)』は、亀井静香郵政・金融担当相の唱えた、いわゆる「モラトリアム」法案が具体化された法律ですが、その第1条には、法制定の目的が明記されております。

「この法律は、最近の経済金融状況及び雇用環境の下における我が国の中小企業者及び住宅資金借入者の債務の負担の状況にかんがみ、金融機関の業務の健全かつ適切な運営の確保に配慮しつつ、中小企業者及び住宅資金借入者に対する金融の円滑化を図るために必要な臨時の措置を定めることにより、中小企業者の事業活動の円滑な遂行及びこれを通じた雇用の安定並びに住宅資金借入者の生活の安定を期し、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」と謳っております。

その骨子は4つから成り立っております。
1.まず金融機関に対して「努力義務」を課しています。
「金融機関は、中小企業又は住宅ローンの借り手から申込みがあった場合には、できる限り、貸付条件の変更等の適切な処置をとるよう努める。」というものです。
条件変更等を「しなければならない」とは書かれていませんが、金融機関は、その申込の受入れを簡単に「拒否」できなくなってしまったと理解してよいと思われます。

2.そして金融機関自らの取組みとして、
「金融機関の責務を遂行するための体制整備」をすることや「実施状況と体制整備状況等の開示」を行うことを要求されています。
具体的な例で示すと、月間1000件にも及ぶ条件変更等の案件を、たった60人で処理できるはずがないので、そのことに配慮し、金融機関が自ら増員し体制を整えなければならないとされたのです。また、後段の開示についてですが、虚偽開示の際には罰則が付与されることになりました。

3.また行政への対応としては、「実施状況を当局へ報告」しなければならなくなりました。これも虚偽報告には罰則が付与されることになっています。最終的に「当局は、報告を取りまとめて公表」し、その透明性を高めるようにしております。

4.更なる支援措置として、「信用保証制度の充実等」が掲げられています。
このような金融の円滑化関しての対策を取ることにより、たとえば「官庁の指導を理由にして、貸付条件の変更を受け入れない」などの金融機関が虚偽を働くことを防止し、中小企業の資金対策を円滑にしようとするものです。
 2月15日より「景気対策緊急保証」の創設が行われ、例外業種を除く1,118の全業種で6兆円の枠が追加され、今までの30兆円と合わせて36兆円規模となりました。

最近、金融庁が制度普及のために配布したパンフレットでは、「金融円滑化Q&A」なども掲載されております。その中に、「貸付条件の変更等を受けたことを理由で、今後の新規の融資を断れることはありませんか」という質問には、「そのようなことはありません。個別の融資は各金融機関が借り手の信用力などを踏まえて判断しますが、金融庁も、貸付条件等の履歴があることのみを理由に新規融資を拒絶することがないよう、金融機関に対する検査・監督で検証していきます。」と法制の趣旨を具体的に明文化しているところもあり、評価できるといえますね。

なお、この法律を適用できる期間は、現在のところ平成23年3月までとされています。

おしまい 甲賀

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