トヨタ式人間力(ダイヤモンド社)-その1-

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1.世界標準となったトヨタ式経営システム
・「改良」は「お金を使ってよくすること」であり、「改善」は「知恵を使ってよくすこと」
・トヨタ式生産方式は「モノの作り方」という手法と思われがちであるが、実際は「知恵を使って働く人」をいかに育て、その「知恵を使って働く人」によって、どのようにモノをつくり、サービスを提供していくかという「経営システム」である。
・需要変動が激しく、多様化指向が強いなど、日本はこれまでにない時代を迎えている。起業やビジネスマンは、テキストなき時代に生きているという覚悟が必要である。テキスト探しや人真似をやめ、自ら知恵をひねり、そして実行するしかない。
・もはやこれまでと同じやり方を続けていては競争に勝てない。生き残るのさえむずかしくなる。まずは何を持って自らのセールスポイントとするかを目標として定める。モノづくりなら、「品質・納期・コスト」といった点で、どこにも負けない「つくる力」を身につければ、景気には左右されない。あとは目標に向かって日々の改善と実践を繰り返す。地味に見えても確かな目標に向かって歩めばその先には「オンリーワン」が見えてくる。

2.人間性を尊重するトヨタ式経営システム
・トヨタ生産方式はごく当たり前の考え方の上に成立している。「市場を中心とした考え方」に立ち、「徹底した無駄の排除」を行って「良い考えでよい品をしかも安くつくる」という当たり前の話を実践しているに過ぎない。
・人の能力・知恵をフルに活かさずして、いまの時代が求めているモノづくりは不可能だ。機械が得意な仕事と、人間の得意な仕事を明確に分けて考える。人間と機械の共存と調和こそ留意すべきところである。
・人間の能力を信じない経営者が多すぎる。個人レベルでも、とかく人は自分で自分に限界を設ける場合が多い。しかし、人間には機械にもコンピューターにもできない力が備わっている。マンパワーは推し量れないと信じる。無限の力を引き出すために、日々の努力を惜しまない。そこにはテキストなき時代の生き方がある。
・働く人にとって、意味のない無駄な作業は省き、一人ひとりの働きがいを高めていく。これがトヨタ生産方式の目指すものであり、そのために改善を重ねる。それが「人を大切にする」職場作りに繋がっていく。

3.トヨタ式を実践できる人・できない人
・トヨタ生産方式が実践できるかどうかは、経営者にどれだけ真剣に取り組む姿勢があるかにかかっている。他人任せでうまくいくほど甘いものではない。同時にトップ自身が決して現状に満足しないで常に危機感を持って、改善を続けられるか、トップがやるかそれともわれ関せずで部下に任せるかという「トップの覚悟」が問われている。
・何かをやろうとしたときは、「目的は何なのか」「考えられる手段には何があるのか」をきちんと検討する。一つの目的に対して解決のための手段や方法は非常に多い。目的と手段を混同しないで常にベストの手段・手法を選択しなければならない。「人を育てる」ことを忘れ、手段・手法の一部だけを導入し、あたかもトヨタ生産方式を実践しているかのような錯覚を起こすようでは本当の実践者とはなりえない。
・新しい方法と既存の方法を比較して、両方のコストがほぼ同じなら新たしい方法を採用する。「新しい方法のほうが改善の余地が大きいから」というのがトヨタ生産方式の考え方である。
・アウトソーシングを否定するつもりはまったくないが、自社のモノづくりや、自社の仕組みを基本的に洗い直し整備する作業なしに、安易に外部に任せればいいというのでは、本当の競争力は生まれない。
・管理は知識でやれる。人をひっぱって行く監督者には能力・魅力が必要である。これからの時代は知識だけ、権力だけのトップやスタッフでは、人はついてこないし、変革は起こせない。まずは自ら率先して「やってみる」「やってみせる」ことである。
・トヨタ生産方式にとって重要なのは「評価」ではない。働いている一人ひとりに「考えて働く」大切さを教える姿勢である。最近の若者は偏差値に代表されるように小さいころから評価され育ってきた。評価されるのには慣れている。しかし、本当は自分の考え方や自分という人間を「理解」されたがっている。

4.人間の知恵は無限である
・「人は困らなければ知恵は出ない」「困った中で事実を一つひとつしっかりとおさえて、なぜを何回も繰り返していけば素晴らしい創意工夫が結晶する」
・「変化の早さ」を認識するのは大切だが、踊らされ慌てふためいてはいけない。一気にどこかに行こうとするのではなく、まずは目の前の事実や問題をじっくりと見て、「なぜ」を繰り返す。そうすれば必ず創意工夫が生まれ、道は開ける。
・自律神経を通すためには、さまざまな仕組みもひつようであるが、何より働いている人たちの意識が重要である。特に現場の一人ひとりが大いに知恵を発揮しなくてはこんな話は不可能である。自動機械依存していると計画を次々と変えていく仕事にはならない。人中心のモノづくりだからこそ、マーケットの変更に応じたモノづくりが可能となる。変化を知覚できるのが人だけであるように変化への対応も人抜きには考えられない。
・「能力がない」はただ単に「悩む力=脳力」が足りないだけである。特に上に達人の役割は「考え抜くことと実行すること」の二つである。「脳力がない」と感じたら、さっさとその地位を去ったほうがよい。

5.高度な文化に支えられた日本人の知恵
・お手本のない時代には、知識や上からの指示に頼るだけでは新しいものは決して生み出せない。自らの知恵によって日々の革新を目指す体制が必要である。指示事項も満足にできないようではどうしようもないが、指示を忠実に実行するだけでは十分とはいえない。指示について「もっとよいやり方は」と常に考えながら仕事に取り組むのが最高である。
・情報がたやすく手に入り、お金がある時代、企業も個人も知識はいくらでも入手できる。しかし、他社との競争に勝ち、新たな挑戦をしようと思えば、知識に知恵が加わらないと不可能である。みんなに平等である知恵を、いかに活用するかが大切である。
・世界一の品質を誇るあるトヨタ工場の設備も、最新鋭の機械がうなりをあげているわけではない。現場の知恵が山ほどついた機械が静かに動いているだけ。見栄で買っただけの知恵もついていない最新鋭機は、油をさして床の間に飾っておけばいい。競争に勝つためには人と同じではどうにもならない。知恵の数だけ競争に強くなるという言葉を今こそかみしめるべきである。

続く

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