ホーム > トピックス > 納税通信 2007年5月14日号
 公的資金を上手に活用

エヌピー通信社 『納税通信』
融資獲得大作戦2007
税理士 甲賀伸彦
 

第2回 公的資金を上手に活用

 中小零細企業が事業規模の拡大や経営の安定化に向けるための必要な資金については、金融機関の健全化のために民間金融機関より融資が受けづらくなっている実情があり、特にプロパー融資は難しい状態です。さらには金利の面でも格付け連動型のように、中小零細企業にとっては辛い所です。

 都道府県や市町村などの地方自治体には、中小零細企業向けの各種の融資制度が用意されています。このような融資制度を(狭義の)「制度融資」と呼んでいます。広い意味での「制度融資」には、国民生活金融公庫や中小企業金融公庫などの全額政府出資の政府系金融機関が行なっている各種の施策に応じた融資制度も含まれます。これらの政府系金融機関の創設の目的には「一般の金融機関からその融通を受けることを困難な」企業を対象にしていることからも、「国」が中小企業をバックアップしているともいえるでしょう。当然の事ながら、これらの「制度融資」の借入利息等については、民間金融機関のプロパー融資よりも低利になっているのが特徴です。

「制度融資」とは、地方自治体と指定金融機関と信用保証協会の三者が協調して、中小企業が金融機関から融資を受けやすくするための制度をいいます。地方自治体は、融資に必要な資金の一部「呼び水」として金融機関に預託します。取り扱い金融機関はその資金に自己資金を加えて、地方自治体が定めた融資条件にしたがって、それぞれの金融機関の判断で融資を実行します。

 つまり、地方自治体は融資の申込者が対象者として最低条件に合致し、融資条件にあった申込みであるかを判断する役割になっています。一方、融資のための調査や審査は、取り扱い金融機関が行なうため、最終的な融資決定の判断は金融機関に委ねられる事になっています。

 一般に、中小企業が「制度融資」を活用する場合には、設備投資などに絡んでメインあるいは、サブメインの民間金融機関に相談することが多いと思われます。事前に商工会議所・商工会やインターネットなどで、「制度融資」の情報を入手しておき、該当すると思われる制度を提示したほうが、スムーズな展開となるでしょう。


 民間金融機関より中小企業に対する制度融資が行なわれる場合、その三者の役割は、次のようになっています。

 都道府県や市町村などの地方自治体は、1) 制度融資のために必要とされる原資を預託金として、金融機関に預け、2) その融資に対して条件を定めます。3) また、信用保証料の軽減措置等を実施しています。

 指定金融機関としてあげられている取り扱い金融機関においては、1) 地方自治体からの預託金に金融機関の自己資金を加えて融資を行ないますが、2) 申込みのあった中小企業ごとに審査を行ない、それぞれの金融機関の判断によって、地方自治体の定めた条件により融資を行ないます。

 さらに各地の信用保証協会では、1) 金融機関から事業資金を借り入れる際に公的な保証人の役割となり、借り入れを容易にしますが、2) 金融機関を通じて保証申込みのあった中小企業ごとに保証審査を行い、保証の諾否を決定しているのが実情です。


 ここで東京都の場合を例にとって、「制度融資」の概要を説明します。

 利用できる企業の条件として、1) 中小企業であること、2) 都内に営業の本拠があり、同一場所で同一事業を営んでいること、3) 法人あるいは所得税、および事業税を滞納していないこと、4) 東京都信用保証協会の保証対象となる業種を営んでいることなどがあげられます。

 1) の中小事業者の範囲は、資本金または従業員数いずれか一方を満たす会社・個人、事業協同組合となっております。

業  種 資本金 従業員数
製造業等(ソフトウェア業・情報処理業を含む) 3億円以下 300人以下 (※1)
卸売業 1億円以下 100人以下
小売業(飲食業を含む) 5千万円以下 50人以下
サービス業 5千万円以上 100人以下 (※2)
医療法人(※3) 条件なし 300人以下
 ※1 ゴム製品製造業は 900人以下
 ※2 旅館業は 200人以下
 ※3 医療法人及び医業を主たる事業とする社会福祉法人、財団法人又は社団法人

 通常、東京都の制度融資を申し込む場合は、東京都にある銀行、信用金庫、信用組合などの「取扱指定金融機関」が窓口となります。すでに金融取引や制度融資の利用実績のある方については、それらの金融機関の融資窓口へ相談することになります。

 新規に創業する方、あるいは創業5年未満の場合には、「創業融資」があります。融資対象として、1) 事業を営んでいない個人で、自己資金があり、創業しようとするもの、2) 創業した日から5年未満の中小企業者及び組合、3) 分社化しようとする法人、となっています。しかしながら、これらの方々の場合には直接民間金融機関の窓口に出向いても、信用力の判断など難しい問題がありますので、東京都産業労働局金融部金融課や東京商工会議所、あるいは東京信用保証協会などのあっせん窓口で相談の上、申込みをした方が良いでしょう。

 東京都の場合、従業員数が製造業等20人以下(卸・小売・サービス業では5人以下)を対象とした「小規模事業者向け小口融資」は、一企業あたりの限度額が1250万円となっています。さらに、商工会議所や商工会の経営指導を平成18年度10月以降、6ヶ月以上受けた方については0.1%の金利優遇となりました。

 従業員数が製造業等30人以下(卸・小売・サービス業では10人以下)「小規模事業者向け融資」の融資限度額は8,000万円となっています。

 また、昨今の経済状況の悪化から、黒字であっても、資金不足に悩まされている企業が多数見受けられます。「資金状況改善融資」は、1) 「クイックつなぎ」として500万円までなら保証の審査が原則3営業日以内で行われるため、緊急な資金需要に対応できます。また、2) 「借換」については5,000万円までの範囲で、複数の保証付融資制度を利用している方で、元本を原則として1年以上約定どおり返済している場合には、既存融資を一本化することにより返済負担の軽減を図る融資となっています。

 以上の他にも、いろいろな用途に利用できる一般的な事業資金の「自律経営融資」、新製品開発や事業多角化などさまざまな取組みを支援する「産業力強化(チャレンジ)融資」、売上減少・取引先企業の倒産等に対応する「経営支援融資」など、多数の制度融資が用意されていますので、目的に応じて選択することが可能です。

 詳しくは、
  ・ http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/kinyu/yuushi/ichiran.html (東京都)
  ・ http://www.cgc-tokyo.or.jp/business/tokyo.html (東京都信用保証協会)
をご確認ください。

 制度融資を利用する場合でも、自社の財政状態・経営成績については、常に最新のものを用意するばかりではなく、経営者自らがその内容を理解し、融資の担当者等に適切に説明できなければいけません。日ごろの会計数値の現状把握や予算との比較などが、いかに大切かを考えさせられますね。


<< 戻る 進む >>


ホーム事務所概要所長プロフィールトピックス行政書士
各種セミナー出版書籍リンク求人情報メールショッピング


Copyright © 甲賀伸彦税理士事務所 1997-2011
All Rights Reserved.