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 月刊「税理」 連載コラム 2005年1月号
第1回 「メインバンク」について考えてみよう
 取引業者の社長様より、複数の金融機関と取引をした方が良いとアドバイスを受けました。その意味は理解できるのですが、メインバンクをどこの金融機関にすればよいか迷っています。

 新たに事業を始める、あるいは既に事業を継続されている方にとっては、メインバンクをどのような基準で選択するかで、悩まれているかと思われます。今ではその数も減ってきた都市銀行(都銀)をメインバンクとして取引を行なえば、見栄えが良いのでしょうが、創業間もない会社、もしくは年商ベースで10億円にも満たない会社の場合は、あまりお勧めする事はできません。さらに都銀は、経営の合理化と生き残りをかけた合併劇によって、行員一人当たりの担当企業数も相当な数になるため、中小零細企業に対する面倒は見切れないといった状況です。

 やはり、中小零細企業の場合は、事務効率などのことを考慮に入れ、「近さ」を優先すべきでしょう。その点からは、Face to Faceを信条とし、地域密着型の「信用金庫」は、お勧めです。仮に担当者が転勤になったとしても、同じ市区町村内での移動のため、地域が限定されていることから、いつでも連絡がとれるいう点で安心です。

 ところで、金融サービスは同じでも、経営理念の違いなどで組織のあり方が、それぞれ異なります。「銀行」は、株式会社であり、株主の利益が優先され、主な取引先は大企業となります。「信用金庫」は、地域の方々が利用者・会員となって互いに地域の繁栄を図る相互扶助を目的とした協同組織の金融機関で、主な取引先は中小企業や個人です。利益第一主義ではなく、会員すなわち地域社会の利益が優先されます。さらに、営業地域は一定の地域に限定されており、お預かりした資金はその地域の発展に生かされている点も銀行と大きく異なります。

 一方、「信用組合」は、信用金庫と同じ協同組織の金融機関ですが、根拠法や会員(組合員)資格が異なります。信用組合の場合、検査・監督事務が都道府県から国、すなわち金融庁に移管されたのは、最近のことです。信用組合は、信用金庫とほぼ同様な規模・業務体制であったのにもかかわらず、信用組合の監督機関が各都道府県であったため、自己査定についてもまちまちであった事は、否めないのではないかと思われます。

 この他に、「地方銀行」(地銀)は、都銀と信用金庫の中間に位置する存在ですが、やはり名前の通り、都道府県単位で地域に限定した金融機関です。よって、「信用金庫」と同様に、中小零細企業には欠かせない存在です。融資の際の金利においては、信用金庫よりは低めに設定される場合が多く見受けられますが、欠点として、担当者が転勤する場合、他の市区町村に移ってしまうため、会社の状況などは引継ぎ事項として残ってはいるものの、新しい担当者と一からスタートしなければならないのが、難点と言えます。

 ところで、金融機関との取引は、預金取引と融資取引がありますが、金融機関から見た「取引」とは、融資取引を指します。よって、預金取引のみで、借入金すなわち融資取引のない会社は、金融機関から見て取引先(お客様)には、該当しません。ただし、企業にとっては、売上入金や代金決済などを行なったり、些少であっても定期積金などの実績を重ねることが、今後の融資取引を実現するためのステップとなることは、間違いありません。

 ところで、メインバンクだけに会社の全取引を集中させるやり方は、会社の状況や内容が当該銀行に把握されることになる訳ですから、融資を受ける際には、比較的スムーズに行なわれるはずです。ただし、利息などの条件面などについては、金融機関主導の形にならざるを得ないかもしれません。

 それを回避する上では、サブ・メインバンクとのお付合いが必要になってきます。さらには、メインバンク一行だけの場合、そこからの借入金があると、社長自らが定期性預金などを解約する事に躊躇したり、あるいは、今ではあまり見られなくなりましたが、金融機関が、「拘束性預金」のつもりで解約を阻止することが考えられます。

 それの自衛手段として、メインバンクは借入れを行なう金融機関、またサブ・メインバンクは定期性預金をする金融機関とすれば、比較的自由に会社の資金を有効活用できますし、今後、サブ・メインバンクからの融資取引の可能性も高まるのではないかと思われます。具体的には、「信用金庫」と「地方銀行」の組み合わせで、メインバンク及びサブ・メインバンクとして活用する方法が、中小零細企業にとっては、もっとも良いのではないでしょうか?


未取引の金融機関から、金利の見直しを理由に借り換え等を勧められる場合があると思われます。その際には、メインバンクあるいはサブ・メインバンクに、同様の条件の見直しなどについても、いつでも相談できる環境を整えておく事が必要ですね。



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